災厄の魔女が死神の愛に溺れるとき
カルラの誤解が解ければ元に戻れるのでは。
そう考えたが、カルラに会うためには店まで行かなければならず、今の自分が行って話を聞いてもらえるとも思えない。委託販売も次は受けてもらえないかもしれない。唯一の収入が断たれたも同然だった。
買い物に出ても何も買えずに帰る日々。
「フランごめんね、今日も何も買えなかったの。またスープでがまんして」
このままでは伏せっているフランに食べさせる食事がなくなる。なんとか栄養が摂れたらと、いつもの芋のスープに薬草畑の薬草を加えようと思いついた。季節は秋だから、森の奥へ行けば木の実だって獲れるはず。それを炒って塩をふれば……。
だがそんなルーナの希望はすぐに打ち砕かれた。
森の奥で木の実を集めて戻ってきたルーナの目に、ひどく荒らされた薬草畑が映った。駆け出した。
二人の家は、フランの結界が張ってあるから彼らは近寄れない。悪さもできないから安心していたが、練習としてルーナが張った結界の畑と作業場は彼らの侵入を許してしまった。結界の作りが甘かったのだ。
フランと時間をかけて耕した畑は、根の細い植物も強く育つようにと土を柔らかくして、暖炉の灰を混ぜたり森の奥の腐葉土を混ぜたりと手をかけて作り上げた、周囲よりも栄養に富んだ場所だった。
そこで育っていた薬草は根こそぎ抜き取られていた。抜かれているだけなら植え替えての修復もできるが、根も葉も茎も、種類もごちゃ混ぜになって、ぐちゃぐちゃにちぎられていた。更に、その大事な畑の真ん中には大きな穴が掘ってあった。焚き火をしたらしい跡で、見覚えのある陶器のカケラと燃えカスもあった。
「まさか……」
作業場に駆け込んだ。部屋の真ん中にある炉の上にあったはずの土鍋は無く、立てかけておいた箒もない。棚にあった物も全て床に落ちていて、割れるものは粉々に、液体は床板に染み込んでいた。フランの為の作り置きの薬だってあった。それら全てが、床に散乱し、取り返しのつかない状態になっていた。
悔しくて堪らなかった。こんな扱いを受ける理由が、ルーナにはわからない。わかりたくもなかった。
寝込んでいるフランに与えられるのは、少しばかり残った小麦粉を水に溶いた液体のみしかなくなった。その小麦粉だってじきに底を尽きる。こんなもので命が繋がるわけがなく、この頃からフランは急激に衰弱していった。
そしてある日の未明、下顎だけで呼吸をし始めてまもなく、一つ大きく息を吸って、フランの人生が終わった。
そう考えたが、カルラに会うためには店まで行かなければならず、今の自分が行って話を聞いてもらえるとも思えない。委託販売も次は受けてもらえないかもしれない。唯一の収入が断たれたも同然だった。
買い物に出ても何も買えずに帰る日々。
「フランごめんね、今日も何も買えなかったの。またスープでがまんして」
このままでは伏せっているフランに食べさせる食事がなくなる。なんとか栄養が摂れたらと、いつもの芋のスープに薬草畑の薬草を加えようと思いついた。季節は秋だから、森の奥へ行けば木の実だって獲れるはず。それを炒って塩をふれば……。
だがそんなルーナの希望はすぐに打ち砕かれた。
森の奥で木の実を集めて戻ってきたルーナの目に、ひどく荒らされた薬草畑が映った。駆け出した。
二人の家は、フランの結界が張ってあるから彼らは近寄れない。悪さもできないから安心していたが、練習としてルーナが張った結界の畑と作業場は彼らの侵入を許してしまった。結界の作りが甘かったのだ。
フランと時間をかけて耕した畑は、根の細い植物も強く育つようにと土を柔らかくして、暖炉の灰を混ぜたり森の奥の腐葉土を混ぜたりと手をかけて作り上げた、周囲よりも栄養に富んだ場所だった。
そこで育っていた薬草は根こそぎ抜き取られていた。抜かれているだけなら植え替えての修復もできるが、根も葉も茎も、種類もごちゃ混ぜになって、ぐちゃぐちゃにちぎられていた。更に、その大事な畑の真ん中には大きな穴が掘ってあった。焚き火をしたらしい跡で、見覚えのある陶器のカケラと燃えカスもあった。
「まさか……」
作業場に駆け込んだ。部屋の真ん中にある炉の上にあったはずの土鍋は無く、立てかけておいた箒もない。棚にあった物も全て床に落ちていて、割れるものは粉々に、液体は床板に染み込んでいた。フランの為の作り置きの薬だってあった。それら全てが、床に散乱し、取り返しのつかない状態になっていた。
悔しくて堪らなかった。こんな扱いを受ける理由が、ルーナにはわからない。わかりたくもなかった。
寝込んでいるフランに与えられるのは、少しばかり残った小麦粉を水に溶いた液体のみしかなくなった。その小麦粉だってじきに底を尽きる。こんなもので命が繋がるわけがなく、この頃からフランは急激に衰弱していった。
そしてある日の未明、下顎だけで呼吸をし始めてまもなく、一つ大きく息を吸って、フランの人生が終わった。