あの夜は、弱っていたから
「涼さ、今の彼氏とは、寝た?」

「………え?」

何をいきなり聞いてくるんだ、この男。

「身体の相性大事だろ」

そうかもしれないけど、それここで聞く?

「…黙秘権」

「あっ、そう」

そう言うと、淳史はグイッとウォッカを飲み干して、もう一杯注文する。

なんか、珍しく淳史酔ってるのかも…。

「…じゃあさ…」

目の前に差し出されたウォッカをもう一口飲むと、急に淳史が私の顔をじっと見てきた。











「俺とどっちが気持ちよかった?」









まさかの、淳史の質問に、私は唖然としてしまった。

今まであの時のことを蒸し返すことをしなかった淳史が、なんで、このタイミングで聞いてくるのか訳がわからない。

私は、まだたっぷり残っているソルティドッグを一気に飲み干して、席を立った。

「淳史、飲み過ぎ。私、今日は帰る」

コートとハンドバックを持ち、お釣りは貰わずに、お札だけ置いてお店を出た。

「バカ淳史」

そう呟いて、早足で家へと向かう。

比べたくなかった。比べるために抱かれたわけじゃないから。

悲しくて、悔しくて、むかついて、私の目から涙がボロボロと溢れた。


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