あの夜は、弱っていたから
月日は流れ、あっという間に12月。

あれ以来、私は淳史に会っていない。淳史がなんで、急にあんなことを言い出したのか、いまだによく分からない。

「…さむいっ」

コートを着ていても、ブルっと身体が震えるほど冷え込みが激しくなってきた。

ブーブーッ

あっ、石井さんからだ。

〝ごめん、今週も出張だ〟

付き合って3ヶ月半、石井さんは月に1度か2度は出張があるらしく、必ず会えない金曜日が出てくる。

〝大丈夫です。お仕事頑張ってください〟

そう返信して、スマホをポケットにしまう。

「涼ちゃん?」

「あっ、マスター。ご無沙汰してます」

呼ばれて振り返ると、バーのマスターがスーパーの袋を片手に立っていた。

「最近、来ないから、あっくん寂しそうだよ?」

えっ?

「淳史、彼女いないんですか?」

「うん。毎週来てるし、珍しくずーっといないんじゃない?」

ずーっと?あの淳史が?

「時間あったら、おいで」

マスターの言葉に、

「はい」

と返事をして、今週は行こうかな、とちょっとだけ気が向いた。




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