あの夜は、弱っていたから
「お前の理想って、どんな男?」

えっ…。

「優しくて、私だけを愛してくれる人」

「ふーん。居そうだけどな、そういう男はいっぱい」

私は、今まで男運がなかった。私がそうさせてしまっているのか、いつも浮気をされてしまう。

大学4年のクリスマス。私は浮気が発覚した彼氏と別れ、ひどく弱っていた。だから、あの時の私は、恋愛における判断を間違えたんだ。

「お前、結構いい女だけどな」

そう言って、私の頭を撫でる淳史。

「あんまり女に気軽に触ると、そのうち訴えられるかもよ?」

「それ、きついな。無職になっちまう」

くくっと笑う淳史から視線を逸らして、私はソルティドッグを飲み干した。

淳史にとって、私はただの大学からの仲の良い友達。

私にとってもそうだけど、実はちょっとだけ心の中で蓋をしていることがある。

私と淳史は、大学4年のクリスマス。一線を越えた。でも、たった3日で、私から淳史に別れ話をした。

もとの友達のままがいいって、お願いしたのだ。

それは、きっと恋人として長く続かないって分かっていたから。

今までで何人もいる元カノのという括りに入るのが怖かったから。

自分でももう気がついてる。ここでこうやってお酒を一緒に飲みたいと思えるのは淳史だから。

本当は頭を撫でられて、心の中では特別であればいいのにって思っていることも。


< 3 / 18 >

この作品をシェア

pagetop