あの夜は、弱っていたから
だけど、淳史には、私に対する恋愛感情は一切ない。

だから、私は早く運命の人を見つけて、この気持ちを隠してしまいたい。

「私、そろそろ帰るわ」

「明日の合コンの準備?」

「そう。女の子は前日からが勝負よ」

「あんまり変わんなそうだけどな」

くくっと笑った淳史の頭に、わざとハンドバックを手に取るふりをして、ぶつける。

「いてっ」

「あら、ごめん」

ふふっと笑いながら、お財布を出す。

「涼」

「何?」

「玉砕したら、慰めてやるよ」

くくっと笑った淳史を見て、私は呆れてため息をついた。

「遠慮しまーす」

マスターにお札を渡して、お釣りを受け取る。

「じゃあ、淳史、また来週。タイミング合えば」

「おう」

軽く挨拶をして、私はお店を後にした。

生温い風が、私の身体にまとわりつく。

〝慰めてやるよ〟

淳史の言葉が頭の中で何度も繰り返される。

「…バカ」

こっちの気も知らないで。自分が今フリーだからって、そういうこと、普通言わないでしょ。

私は、途中のコンビニで、高いパックを購入した。

明日、気合い入れてやる。


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