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学校に在籍するようになると、福祉行政が動き始める。
「先生、生活保護なんて、お金か力がないともらえるわけがないよ。」
僕の認識が大きく不整合な状態になる。
社会に絶望しているこの親子が、どんな経験をへてきたのかは、聞こうとも思わない。いや、こわくて聞く勇気をもたない。
ただ、子どもが中学生という「身分」を勝ち取って、行政の対応が変わったらしい。学区内に借家が見つかり、定住することもできた。
軌道に乗り始めたという手応えがあった。
心の片隅に、こうやってうまくいくかも知れないというイメージが出来つつあった。そのスタートが、中学への入学だったならと考えると、ほのかな達成感ももつことができるようになった。
「夏休みの生徒会リーダー研修に、参加する人は誰にしますか?」
次年度以降のリーダーを育成する、生徒会主催の研修は、この学校の伝統行事だった。市の自然体験施設に一泊し、研修やキャンプファイヤーなどのレクリエーションが行われる。費用は学校負担だ。
碧は、すでに周囲から、そのメンバーだと見られていた。
「本当に、わたしが行っていいの?」
クラスメイトたちは全力で支持を表明する。そのぐらい、あの子は周囲の支持があつくなっていた。
その夜教室で勉強しながら 、碧は言った。
「みんなが行っていいって言ってくれて、めちゃくちゃうれしかった。」
「よかったな。」
「これだったら、まだ学校にいてもいいって思ってもらってる...っていうことかな。」
「当たり前だよ。それは前から言ってるだろう。」
そして少しの間。
「あとどれぐらい頑張ったら、学校をやめなくていいのかな...。」
悲しさなんて微塵もない、純粋に事実だけを知りたいという表情。何回も、何十回も、中学生に退学はないと聞いてきた碧なのに、まだ自分がここにいられるのかどうか、不安を抱いている。こんなに一生懸命な碧が、まだ自分の存在を申し訳ないものだと感じている。
どうすれば、この碧から、そんな恐怖を取り除くことができるのだろう。
「碧がいなくなるなんて、周りの仲間がゆるさないから、大丈夫。」
そう言いながらも、僕にはその答は見つからなかった。
「先生、生活保護なんて、お金か力がないともらえるわけがないよ。」
僕の認識が大きく不整合な状態になる。
社会に絶望しているこの親子が、どんな経験をへてきたのかは、聞こうとも思わない。いや、こわくて聞く勇気をもたない。
ただ、子どもが中学生という「身分」を勝ち取って、行政の対応が変わったらしい。学区内に借家が見つかり、定住することもできた。
軌道に乗り始めたという手応えがあった。
心の片隅に、こうやってうまくいくかも知れないというイメージが出来つつあった。そのスタートが、中学への入学だったならと考えると、ほのかな達成感ももつことができるようになった。
「夏休みの生徒会リーダー研修に、参加する人は誰にしますか?」
次年度以降のリーダーを育成する、生徒会主催の研修は、この学校の伝統行事だった。市の自然体験施設に一泊し、研修やキャンプファイヤーなどのレクリエーションが行われる。費用は学校負担だ。
碧は、すでに周囲から、そのメンバーだと見られていた。
「本当に、わたしが行っていいの?」
クラスメイトたちは全力で支持を表明する。そのぐらい、あの子は周囲の支持があつくなっていた。
その夜教室で勉強しながら 、碧は言った。
「みんなが行っていいって言ってくれて、めちゃくちゃうれしかった。」
「よかったな。」
「これだったら、まだ学校にいてもいいって思ってもらってる...っていうことかな。」
「当たり前だよ。それは前から言ってるだろう。」
そして少しの間。
「あとどれぐらい頑張ったら、学校をやめなくていいのかな...。」
悲しさなんて微塵もない、純粋に事実だけを知りたいという表情。何回も、何十回も、中学生に退学はないと聞いてきた碧なのに、まだ自分がここにいられるのかどうか、不安を抱いている。こんなに一生懸命な碧が、まだ自分の存在を申し訳ないものだと感じている。
どうすれば、この碧から、そんな恐怖を取り除くことができるのだろう。
「碧がいなくなるなんて、周りの仲間がゆるさないから、大丈夫。」
そう言いながらも、僕にはその答は見つからなかった。