野良狼と野良少女
「んん…ソファかたい」
「贅沢言うな、さすがの俺も一葉の部屋は勝手に入れない。」
「じゃあヤノくんの部屋」
「お前馬鹿なの?頭冷やせ、冷却シートもう3枚くらい必要なんじゃねぇの」
「やーだー!じゃあ寝ない」
ぷう、と頬を膨らませれば一ノ瀬くんは目を丸くした。
ひどいやつだ、人を化け物でも見るかのような目で見ちゃってさ。
そもそも私は自分の家のベッドにもこだわりあるんだよ。
まあこだわりと言っても、一時期お父さんへの嫌がらせでお金を使い込んでいた時期に買ったもの。
高いもの買ってやろうって思って高級なセミダブルベッドを買ってやったんだ。
…それでも文句ひとつ言わなかったから、あれきりお父さんからの仕送りのお金には手をつけてないんだけど。
「じゃあ自分の家帰る?」
「やだ、あの家嫌い」
「クソガキかよ、ったく」
呆れ顔で眉間にしわを寄せる一ノ瀬くん。
めずらしいな、一ノ瀬くんも困ることなんてあるんだ。
なんか、たのしいかも。