野良狼と野良少女
着いた先は大きなマンション。
うちのマンションと同じ系列の、いわゆる高級住宅だ。
「本当に近所じゃん」
「んな嘘つかねぇよ。ほら乗れ」
前に鞄を背負って、跪いて背を向ける一ノ瀬くん。
これはもしかしてもしかしなくても…
「おんぶ!?」
「いいから早くしろ置いてくぞ」
「わーい」
ふらふらな足取りで何とかタクシーから降りて一ノ瀬くんの背中に乗る。
タクシーの運転手さん、心配かけてごめんね。
「はい到着。寝ろ。何もしないでそのまま寝やがれ」
マンションの一室について、そのまま寝室の大きなベッドに下ろされる。
熱のせいか何のせいか私のテンションはどんどん上がっていた。
「ベッドでかっ」
「ダブルよりちょっとでけぇやつだから」
「ルームツアーしたい」
「1人で歩けるようになってから言え」
そのまま半ば強引に体温を計らされて、体温計を奪って見た一ノ瀬くんに怪訝な顔をされる。
なんだ、また上がってしまったのだろうか。顔が怖い。
「解熱剤、飲め」
「やだよ、薬きらい」
お粥たちと一緒に買ってきたと思われる解熱剤をほおり投げられ、私はそれをベッドサイドテーブルに追いやる。
薬なんか不味いから自ら飲むもんか。