野良狼と野良少女
「……」
好きになってしまった、一ノ瀬くんのことが。
こんなにずるくて、意地悪で、からかわれてばっかりなのに。
でも、優しいところとか。
少し強引だけどいつも助けてくれたり、優しいキスだって――
一ノ瀬くんに特別な感情がなくたって、男性経験0の私には全部特別だった。
…なんて、自分で言って少し悲しくなる。
初めてのキスだって、さっきのキスだって、きっと一ノ瀬くんにはなんの感情もないものなのに。
「…何拗ねてんの」
「拗ねてないよばか」
「あ?」
一ノ瀬くんの眉間にピキリと線が入る。
あ、うっかり勢いでバカって言っちゃった。
まあ一ノ瀬くんが悪いし、いいよね。
そうそう。私悪くない。
2回とも弱ってるところ狙われたんだもの。