野良狼と野良少女




「てめぇ俺に看病させた借りあるの忘れてねえだろうな」


「ついてこないでください。風邪伝染っちゃうんで」




ソファに体育座りで座って一ノ瀬くんに背中を向ける。




勝手にキスしたこと、許してないんだから。



え?お前少なからず喜んでたろって?


知らないよ、ファーストキスはもう少しムードのあるシチュエーションがよかったよ。




付き合ってもない男の子に “ ムカつく ” なんて言われながらすると思ってなかった。


私の事なんかなんとも思ってないくせに。




「随分生意気になったな」


「生まれつきです」


「ああ知ってる。お前はそういうやつだもんな」




はっ、なんて鼻で笑って言った一ノ瀬くんは私の後ろにどかっと座る。


ソファの沈みを感じると共に一ノ瀬くんのイヤミでいらいらしてきた。




「むかつくっ…」




勢いで振り向くと勝ち誇ったように微笑む一ノ瀬くんと目が合う。



ああ、騙された。

まんまとやられてしまったのだろう。


これで振り向いて噛み付いたら一ノ瀬くんの思うつぼじゃん…!



< 113 / 240 >

この作品をシェア

pagetop