野良狼と野良少女


「近寄ったら風邪伝染るとか言ってたな」


「近いやだ離れて」





ぐいっと寄せられた綺麗な顔を平手で押し返す。


学校中からオオカミだのヤンキーだの怖がられてる人の顔、押してますよ。


こんな姿みんなに見られたらどう思われるかな。




「伝染るなら、2回のキスでとっくにうつってると思うけど?」


「なっ……!」




ニヤリと上がる一ノ瀬くんの口角と熱を持った自分の顔で、からかわれてる事に気がつく。



ドS!!不愛想ドSオオカミ!!




「もらってやろうか、お前の風邪」





不敵に微笑む彫刻のような美しい顔が私の顔にだんだんと迫ってくる。


押し返していたはずの手はいつのまにか一ノ瀬くんの大きな手によって拘束されていたのだ。




「だ、めだよ…一ノ瀬くん」


「なにが」




キスなんて、私たちはそんなことをする仲じゃないはずだ。




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