野良狼と野良少女
「太一、買い出し着いてきてくんない?この家冷蔵庫からっぽなんだけど」
「旺太の家に食材なんかある訳ないべ、仕方ねぇなぁ。」
ヤノくんはお財布を持って部屋を出ていった。
まずい、まずい、一ノ瀬くんと2人きりになっちゃうよ…!
なんて思ってこっそり一歩横にずれる。
まあ案の定バレていて、チッて舌打ちされたんだけど。
「顔、どうにかしたら。」
「え、それ悪口じゃない…?」
「別にそんな怯えなくてもとって食いやしねぇよ」
「よく言うわ…!!」
さっき散々噛み付くようなキスをしてきた人が。
私を酸欠寸前まで追い詰めた人が。
「何?それとも襲われたいの?」
「…っ、なわけないじゃん…!」
「そうだよな、おっさんとホテル入ろうとしてたくらいだもんな」
「連れ込まれかけてただけでしょ!一ノ瀬くんも現場見てたくせに…!!」
私がおっさんとそういう関係になる人だって、思ってるのかな。
だとしたら結構傷つく。
男性経験はゼロだよ。ハッキリそういうのも恥ずかしくて無理だけど。