野良狼と野良少女
「何にやにやしてんだよ」
「なんでもない」
「は、まだ頭おかしいんじゃねえの」
「もう熱は無いです。看病ありがとね」
きちんとお礼を言うと、ご機嫌を損ねていた一ノ瀬くんもふっ、と笑みを見せた。
この人、こう見えて割と単純なところもある。
「さぁ、お返しが楽しみだな」
…前言撤回、とんだひねくれものだった。
「え、待って?お返しするねなんて言ってないよ」
「俺の看病がボランティアなわけないだろ。あ、饅頭はもういらねぇからな。あみばあば」
「帰る」
「帰らせるわけねぇだろ」
仮にも彼女をばあばなんて言いますか!?
一ノ瀬くんなんでね、言うでしょうけどね!
普通は求めてないよ、でもね、付き合った初日。しかも風邪ひいた彼女。
もう20%くらいは糖度高くてもいいんじゃないでしょうか!
なんて文句ありげな目で一ノ瀬くんを睨んでると、またしてもキスの雨が降り注いだのである。