野良狼と野良少女
「やば、そろそろ教室戻らないとじゃない?」
「授業始まるね、戻ろうか」
私たちがいるのは旧教室棟の空き教室。
自分たちの教室までは少し離れていて時間がかかるんだ。
「…機嫌わるい?」
「さーな」
綾野兄妹がばたばた走っていく中、走る気ゼロの一ノ瀬くん。
仏頂面はいつも通りっちゃいつも通りだけど。
「…っ、」
「はい、機嫌直った」
不意打ちだった。
一葉ちゃんたちが曲がり角を曲がった瞬間、そっと触れた唇。
きっと、誰にも見られていない。
「…っ、見られてなくてもヤダ…!!」
「わがまま言うな、俺が無理」
「見られてたらどうするの、明日から学校来れない」
「じゃあ俺もサボる」
「いやそういう事じゃないわ」
一ノ瀬くんはいろいろな意味で空気が読めないらしい。
そしてちょっと……いや、かなりキス魔である。