野良狼と野良少女


「風呂シャワーどっち派」


「え?風呂…かな」


「了解。そのへん座っとけ」




そのへん、と指さされたソファに大人しく腰掛ける。



人様の家に上がる経験なんかほとんど無いものだからもちろんもても緊張してるわけで。




ましてや、彼氏の家。一人暮らしの。


これってもしや……いやいやいやいや、まだ付き合ったばっかりだし。



一ノ瀬くんそこまで狼じゃないって言うか、いや狼なんだけど違うって言うか…


そもそも今日泊まる気なんてさらさら無かったんだから何も持ってきてない。




可愛いパジャマも、可愛い私服も、可愛い……下着も。


これってもしや…




「絶体絶命…?」


「何独り言いってんの、怖いんだけど」


「なっ…ん、でも、ない、よ?」



明後日の方向を見てそういう私を一ノ瀬くんはバカにしたように笑って向きなおらせた。




「ロボットか。んな取って食いはしねえよ。落ち着けコミュ障」


「コミュ障関係ないじゃん…!!」




何はともあれ、どうやら私の心配には及ばなそうだ。



取って食いやしないらしい。

少し疑い掛けたけど、そんなくだらない嘘つかねえだろって言われるもんね。




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