野良狼と野良少女


ほかほかと湯気の立つビーフシチューを1口食べると、当然のように味も美味しかった。


ほっぺが落ちそう、とはきっとこのこと。




もちろん他の料理も全部美味しくて。


男の子ってこんなになんでもできるの…?


ほとんど自炊もしなければこんなにおしゃれな料理を作れるかも怪しい自分がちょっと恥ずかしい。






「ごちそうさまでした。洗い物くらいは私が…」


「もう食洗機入れた」


「なっ…!!」




食べ終えたばかりのお皿は知らぬ間に食洗機に入れられていて。


しれっと全てをこなし終わった一ノ瀬くんがソファにだらんと沈む。




ギャップが止まらないんだけど…





「私にもなんかやらせてよ、泊まらせてもらってるのに全部やらせて申し訳ない」


「何そんなこと気にしてんの。めずらしい。」


「私だって家事くらいできるんだからね!?」


「はいはい。俺も俺も。一人暮らしもう慣れてる」




菓子折りひとつ持たず急遽上がり込んで泊めてもらって、お風呂の用意もご飯の準備も片付けも、何一つやらせて貰えなかった。


この人仕事できすぎでしょ…!!




しかもそれをしれっとやってのけるからずるい。

要領がいい人って、こういうことか。





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