野良狼と野良少女
わしゃわしゃ、と私の髪をかき乱し一ノ瀬くんは離席した。
広いリビング、ぽつりと放置される思考停止の私。
え?今なんて…
“ 隣で寝ること ”
そう言った…よね?
「……っ!!」
ことの大きさに気づいて顔が一気に熱くなる。
一緒に寝るって、一緒に寝るってことだよね?
隣で?同じベッドで?いやいやいや、私が?一ノ瀬くんと?
「……っ、え、」
声にならない声、とはきっとこのこと。
一ノ瀬くんがお風呂から戻ってくるまでのわずか20分間、当たり前のように私は困惑し悶え続けたのであった。
「……は、まだそんなとこでうめいてたの」
そしてお風呂上がりの一ノ瀬くんが数十分前と1ミリも変わらない私を見て呆れ笑い。
これに関しては私は悪くない。
「だって、一ノ瀬くんが…!」
「何でもしてくれるっていったじゃん。じゃあこれで看病の貸しもチャラにしてやろう」
「言ってないよ…!?それにそういうことじゃ…!」
「楽しみだな、添い寝」
「…っ、もう何も言わないで!」
愉快な愉快な、よるのはじまり。