野良狼と野良少女
「何もしないから、一緒に寝るだけ」
「…う、でも」
「……俺の気が変わる前に大人しく寝てくれない?変な気湧くけど。煽ったら容赦しないよ」
「寝ます、オヤスミナサイ」
「よろしい」
サイドテーブルのリモコンで一ノ瀬くんが電気を消せば、何も見えなくなる。
でも人間というもの、目が慣れてきたら隣で目を瞑る一ノ瀬くんくらいの顔はハッキリ見えてしまうもので。
あれだけいろいろ言ってたくせに私の片手を握ったまますぐに寝てしまった一ノ瀬くん。
多分この手は、逃亡防止用。
「…っ」
捕まってしまった私は当然このまま寝るしかなく。
寝ようにも彫刻のような寝顔に目を奪われて
さらに一ノ瀬くんの香りのするベッドと毛布に包まれて、30分以上眠れなかったのは言うまでもない。