野良狼と野良少女
――
「ただいま……え、」
玄関ドアを開ければ、そこには綺麗に並んだ一足の皮靴。
その隣のパンプスは見覚えのあるユリさんのものだ。
綺麗に磨かれ傷1つないこんな革靴、もちろん私のものではない。
「……ただいま」
「……。」
リビングにはやはり、コーヒーを片手に新聞を読む革靴の持ち主の姿。
…いつぶりだろう、この家にお父さんがいるの。
いつも来たとしても私がいない時間
それか必要なものをユリさんに取りにこさせるか。
普段は別宅に住んでるし、正直昨日あんな喧嘩したばかりでいるなんて思ってもいなかった。
「…仕事は?」
「休みだ」
休み?そんなものお父さんにあるの?
いつも仕事で家を開けていて、帰って来れないからと本社の近くに別宅を構えるような人が。