野良狼と野良少女
気まずい空気が流れ、何か言うべきかと悩む。
昨日は言いすぎたって、謝るべきだろう。
じゃなきゃ強制引越しだって…
「……悪かった、昨日は。」
「……え?」
先に沈黙を破ったのは意外にもお父さんだった。
しかも私が言いかけていたセリフをそのまま言われたものだから頭が真っ白になる。
「…昨日の夜、お前が帰ってこないから電話した。」
「え?いつ…」
「…金髪の彼が出た。彼の家にいて、羅奈は風呂に入ってると」
「え、一ノ瀬くんが?」
そんなこと、一切言ってなかったのに…
「一ノ瀬旺太くんと言ったか」
「……うん」
「羅奈は共通の友人双子の家に泊まっていただけだ、連れていったのは自分だからお前を叱るなと言っていた」
「……っ」
聞いてないよ、一ノ瀬くん。
家にいたくないと言ったのも、友達が欲しいと言ったのも私だ。
一ノ瀬くんのとる行動は全部、私のわがままを聞いてくれていただけなのに。