野良狼と野良少女


リビングと玄関をつなぐ扉が開き、入ってきた人に私は目を丸くする。




「一ノ瀬くん……!え、髪…っ!」


「羅奈が買い物して帰るって言ってたから染めに行って来た」





そこにいたのは私の救世主、一ノ瀬くん。


しかもトレードマークのキラキラの金髪は艶のある綺麗な黒に染められていた。





「はじめまして。昨日は勝手に電話に出て生意気な口きいてすみませんでした。一ノ瀬旺太と申します」


「…私に言われたことを気にして染めたのか」


「金髪飽きてたので、それだけです」





うそつき。

自分に似合うとか言ってもう3年近く金髪保ってたくせに。



どこまでも優しい一ノ瀬くんに目頭が熱くなる。





「いい大人が君まで巻き込んで悪かった。これからも羅奈を頼むよ」


「お父さん…」


「そろそろ仕事に戻らなければならない。またいつでも遊びにおいで。これからはなるべくこっちにも帰ってくるようにする」


「やっぱり仕事だったの!?」


「社長が羅奈ちゃんのこと気になって仕事にならなそうだから午前の仕事全部午後にまわしたの。午後から頑張ってもらうから」





ユリさんはにこにこ笑っているけど、午前の仕事全部午後にって…鬼…?





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