野良狼と野良少女


「…じゃあ」




まだ少しぎこちないけど、私を見てそう言ったお父さん。


あんなに最低な態度をとっていたのに、お父さんは私のことを不器用ながらちゃんと愛してくれているんだ。




「…っ、行ってらっしゃい…!」


「…あぁ、行ってきます」






あとから聞いた話だと、お父さんは私との関係についてユリさんに常々叱られていたらしい。



いい大人のくせに娘の1人も愛せないの!なんて。

お母さん、良い親友をもっていたんだな。




「…行きたいところがあるって言ってたの、美容室?」


「そう。担当美容師にほんとに黒染めしていいのかって半泣きで説得された」


「はは、綺麗だったもんね一ノ瀬くんの金髪」


「でもしばらくはこのままでいいかもな」





やっぱりお父さんの発言をちょっとは気にしてるのかな、なんて。



少なくともこのタイミングで黒染めしたのはお父さんに会うからだろう。





電話に出て庇ってくれたり、わざわざお父さんに直接会ってくれたり、どこまでも救世主だな。





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