野良狼と野良少女
学校で一ノ瀬くんと話したのは同級生3年目にして何気に初めてだった。
やっぱり、圧というかなんというかオーラのようなものがすごいと改めて痛感する。
その点に関して言うと狼と言うよりかライオンなような。
群れで動かないから狼なんだろうけど…
あの日あの場所で一ノ瀬くんに助けられたのは私であり、私じゃない。
通りすがりのパパ活女子アミなんだ。
だから今更その話をするのもおかしい。
けどあの時のパーカーは未だに洗濯して家に保管してあるし、お礼もしてないし…
…そもそも一ノ瀬くんはなんでもう会わないであろう私にパーカーを貸してくれたんだろう。
目立つから、と言っていたけど繁華街を抜けてからは人もいなかった。
寄付…にしてはそこそこ高い、私でも知ってるようないいブランドのパーカーだった。
やっぱり返すべきなのでしょうか…
なんて、この日一日中私の脳内は赤いパーカーと一ノ瀬くんで埋め尽くされていたのだった。
そして一ノ瀬くんは朝のあの一度きりで、その日教室に現れることはなかった。