野良狼と野良少女
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「あり?旺太隣の席叶野さんなの!?」
「……うるさいヤノ」
「ハイハイ辛辣辛辣。もう慣れた。いいな、俺も叶野さんの隣がいい!代わって?」
「だる」
ある休み時間、隣の席からそんな声が聞こえて。
私の話…してるよね?
気まずい。いや私ここにいていいの?どっか行くべき?
だいたいヤノと呼ばれた少年も、私の隣がいいなんて人違いかなにかだろうか。
それとも見たこともないし、話したことも無い私への単純な興味だろうか。
まあ、どちらでもいいけど。
「旺太ガラ悪すぎ。さすがオオカミ。そんなんじゃモテないぞ〜ねぇ叶野さん」
「……へ」
まさか自分に話が振られるなんて思ってなくてつい間抜けな声が出る。
ヤノくんは今私に話しかけたよね?
ねぇ叶野さんって、言ってたよね?
カノウさんはこのクラスに、いやこの学年に、いやいやこの学校に私しかいなかったはず。
「……やめろヤノ」
はい、是非。私からもお願いします。
「めずらし、旺太が女の子庇った!」
「お前がダルすぎて目障りだからだ勘違いすんなバカ猿」
「ひどっ、え、ひどっ!!」
ヤノくんは漫画のようなガビーン!と効果音がつきそうな顔をした。
…確かにちょっと言い過ぎに見えるけど、彼はそういう人なんだろう。
なんせひとりが好きな冷徹オオカミなんだもの。