野良狼と野良少女


「羅奈」




びくっ


「…いち、のせく」





トイレを探してうろうろしていたら通路の反対から一番会いたくない人が来てしまった。



顔をあげれないし、目も合わせられない。


ましてやお酒を口にしてしまったなんて気づかれたら、もっと呆れられる。



隠さなきゃ。

本能的にそう思った。





「…トイレならあっちだけど。それとも帰るの」


「…ぁ、ううん。お手洗い探してたの。ごめんね」





ぼーっとする頭で、ふらつきそうになる足をなんとか耐える。





ばれちゃだめ、これ以上迷惑かけられないんだから。


嫌われたら、呆れられたら、エミリさんってこに奪われちゃうかもしれない。





「…羅奈?なんかふらついてない?」


「大丈夫、だよ」




すれ違いざまに一ノ瀬くんに腕を掴まれて、足が止まる。




気づかないで、お願い。




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