野良狼と野良少女
「そうそう。羅奈は俺に任せて戻んなよ、仕事中だろ。旺太クン」
ぽん、と両肩を後ろから叩かれたと思えば少し強い香水の香りがふわっと香った。
この香り…
「壮馬さ…」
「…なんのつもりですか、壮馬さん」
一ノ瀬くんが壮馬さんの手を払いのけて睨みつける。
「怖いなぁ。なんのつもりでもないよ?仕事中なんだから早く戻りなよってアドバイス」
「羅奈は…」
「旺太くん!こっち片付け手伝ってぇ〜!…何してるの?」
一ノ瀬くんの後ろからぴょんと顔を出し、腕を引く女の子。
お店の制服を身にまとった彼女は、エミリさんだ。
触れられた腕を見てまたもやもやする。
触らないで、なんて言う勇気はない。
彼女には悪意はないかもしれないから。