野良狼と野良少女
― ―――
ブーッ、ブーッ、ブーッ……
「ん…」
電子音に目を覚ませば、真っ暗な部屋にスマホだけが光っていた。
電話…
名前すら確認せずにパッと出たことを、後悔するのはこの後。
「もしもし…」
『羅奈、下にいるんだけど。上がっていい?』
「…っ、やだ。会いたくない」
ふわふわとした頭でも、一ノ瀬くんの声だけははっきり認識できてしまった。
寝起きだし、大泣きしたし、とてもじゃないけど会える状態なんかじゃない。
『…お願い、オートロック開けて』
「…っ、」
一ノ瀬くんはずるい。
そんな真剣な声でお願いされたら私が断れないのを分かってるだろうに。