野良狼と野良少女


…私と壮馬さんが二人で帰ったこと、一ノ瀬くん気づいてなかったんだ。


エミリさんと二人でコソコソ話してた時見えるところからお店を出ていったのに。




胸がズキズキと痛んだ。

二人はバイト中だったから、業務連絡かもしれなかったのにね。





『しかも旺太、エミリちゃん家まで送ってからこっち来てたし』


「……え」


『はは、言うつもり無かったんだけどね。俺意地悪だから言っちゃった~』





私が壮馬さんと2人で抜けたことを知ったうえで、エミリさんと一緒に帰ってからうちに来てたんだ。





……なんか、悲しい。




わがままだって分かってる。




自分がボーッとしててお酒飲んじゃって、壮馬さんに家まで送って貰って。


それを一ノ瀬くんに言うわけでもなくわざわざ家まで来てもらったのに。





『あ、ごめん。もっと旺太と気まずくなっちゃったりした?』


「…いえ、全然大丈夫です。家まで送ってくれて、ありがとうございました」





また遊ぼうね、なんて言う壮馬さんにもう一度お礼を言って電話を切る。


心の中のもやもやは、消えるどころかどんどん大きくなっていくばかりだった。





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