野良狼と野良少女
それが届いたのは午前11時過ぎ。
私が1度起きた時間のちょっと前だ。
「…来てないじゃん」
寝てて気づかなかっただけかも、なんて思いでインターホンの履歴も確認した。
でも誰も映っていなければインターホンを鳴らされた履歴もない。
一ノ瀬くんはうちには来ていない。
メッセージから2時間も経ってるし、学校からそんなにかからないから来ていないのは確かだった。
<羅奈>
<寝てんの?>
<家行く>
一ノ瀬くんからのメッセージを見る。
<ごめん、急用できたから後で行く>
スクロールして、最後に届いたそのメッセージでピタリと指が止まった。
ほら、やっぱり来てないじゃん。
急用ってなんだろう、なんて思っていたのに。
ピロン
<旺太、エミリちゃんと繁華街いるよ>
壮馬さんからのメッセージに背筋が凍りついた。
添付された写真は…
繁華街を一緒に歩く、一ノ瀬くんとエミリさん。
一ノ瀬くんは背中を向けていて顔が見えないけど、エミリさんはとっても楽しそうに笑ってるし、こんなのデートじゃん。