野良狼と野良少女
「……来い」
「……へ」
誰にも聞こえないような声で一ノ瀬くんが呟き、私の机の角を軽く指で叩く。
視線は噛み合わないけど、ついて来いってことだよね。
廊下に出てからも、さすがに周りの目を気にしてくれたのか間隔を開けて歩いてくれる。
そして彼についていってたどり着いたのは非常階段。
ここ…ヤンキーのたまり場って噂流れてて誰も近ずかないのに、初めて来ちゃった。
「なぁ」
「……はい」
振り向いた一ノ瀬くんはじっと私を見下ろす。
怖いよ、怖いけどさ。
それよりも、太陽の光を浴びた一ノ瀬くんが綺麗すぎる。
もちろん顔も綺麗だけど、キラキラ輝いて見える金髪も、吸い込まれそうなダークブラウンの瞳も。
「……お前俺の事怖いの」
「……はい?」
どんな話を振られるかとビクビクしてたのに、予想だにしない質問に目を丸くする。