野良狼と野良少女
「いこ、旺太……って、どうしたの?」
足を止めたままの旺太を振り向くと、私を見て柔らかい表情で微笑んでいた。
今まで見た事がないくらい穏やかな笑顔。
ちょっと怖いくらい。言わないけど。
「なんでもない。好きだなって思っただけ」
「…っ、え!?」
一気に顔に熱が集中する私を他所に旺太は歩みを進めた。
「ほら、置いてくぞ」
「ちょっと待って…!不意打ちは反則だよ」
「この程度でうなるお前が悪い」
「でたでた。私が悪かったでございますよ…」
やれやれ…とため息を着くとふっと私の上に影がかかった。
「旺…ん」
そっと触れたキスに慌てて応えれば、旺太は満足気に笑う。
こんな不意打ち、もう慣れました。
顔が赤くなるのは生理現象として見逃して欲しい。
「好きだ」
「…私もだよ。卒業おめでとう旺太、これからもよろしくね」
暗闇から私を引きずり出し、明るい道に連れてきてくれた旺太。
きっと私はこれからも、彼が与えてくれた陽だまりの中で生きていく。
たった1人の、大好きな君と。
【野良狼と野良少女】