野良狼と野良少女
「電話、誰」
「重い〜!!一葉ちゃんだよ」
「なんだ」
急に現れたと思ったら後ろから私の首に腕を回して体重をかける旺太。
この人はたいがい自分の大きさを理解していないように思える。
でも相手が一葉ちゃんって聞いた瞬間ケロッと離れていくあたりちょっと嫉妬してたのかな、可愛いななんて。
本人に言ったら怒りそうだから黙っておく。
「明日の予定は?1日暇?」
「あ、一葉ちゃんとバ……バ、バラ園に行く」
「チッ」
ついバイトのことを良いかけてしまって口を紡ぐ。
そうそう、言わないんでした。
にしてもバラ園なんて、もっとましな回答は出てこなかったのだろうか。
でも特に触れられなかったからセーフだよね。
「…え、いま舌打ちした?」
「した」
「えぇ…旺太こそ、美容院じゃないの?」
「朝イチだし、午後は暇だし」
不貞腐れたようにつんとそっぽを向く旺太。
感情が分かりやすくて助かるな、まったく
前は何を考えてるのかさっぱり分からなかったけど、やっぱり慣れってすごい。