野良狼と野良少女
「…なあ、やっぱりお前普段猫かぶってんだろ。よく喋るじゃん、アミ」
「……うん、」
「あぁ、羅奈だっけか」
私の本名を口にした一ノ瀬くんに少し驚いた。
絶対知らないと思っていたからだ。
「私のこと知ってたんだ」
あの日から今日まで、存在すら知られてないとどこか当たり前のように思っていたのに。
でも、話したことないのに知っててくれたのはちょっとだけ嬉しかった。
本人には言わないけど
「だって目立つじゃん、お前」
「……はい?私が?」
衝撃の一言に一瞬フリーズしてしまった。
目立つなんて私の対義語じゃないか?
……というか、目立ちまくってる一ノ瀬くんに言われても全く説得力ないよ。
「なにその変なもの見る顔」
「だって目立たないじゃん、私。…もしかしてぼっちとかそういうマイナス面で目立ってる…?」
たしかに高校生でここまで友達いない人なかなかいないよね?
知らぬ間に浮いていたのかな。
だとしたら結構しんどいものが…
なんて、頭を抱えていた私を一ノ瀬くんはあきれ顔で見ていた。