野良狼と野良少女
「お前バイトしてんの?」
「…最近辞めたけど、また始めるよ」
「うちのガッコーバイト禁止だけど」
「そんなの守ってる子の方が少ないと思うけど?」
ため息をついてそう言うと一ノ瀬くんは黙った。
不良な彼がまさか校則なんて覚えてたなんて。
またまた失礼ながら、守ってる校則より破ってる校則の数のほうが多そうだななんて思ってた。
「意外と不真面目?」
「…少なくとも金髪ヤンキーには言われたくないかな」
「はっ、その金髪ヤンキーに助けられたやつが」
「…うるさいよ」
私だってまさか学校で有名な不良狼、一ノ瀬くんに助けられるなんて思ってもみなかったよ。
というか、この人と人生で関わることになるなんて。
だって私とは正反対というか、自由に生きてるように見えるから。
「……何に縛られてんの、お前」
「……なんのこと」
彼はもう気づいている。私がなにかに縛られ、仕方なくお金を欲していることに。
その鋭い眼差しは全てを見透かしたようで自然に視線を逸らした。