野良狼と野良少女
「普通の高校生がそこまで金に困ると思えない」
一ノ瀬くんの言葉がぐさりと胸に突き刺さった。
普通じゃない。そう言われたようで
もちろん自分が普通だと思っているわけじゃない。
…普通でありたいとは思ってるよ、私だって。
「…そう、なら私は普通じゃないんじゃない?」
そっけなく言い返すと一ノ瀬くんは眉をひそめた。
そりゃそうだ。仮にも相手は恩人なのだから。
助けて貰って、お金も借りて、こんな態度なんて間違ってるのだろう。
「俺に借りあるよな」
「……なにそれ、脅し?」
一ノ瀬くんは冷たい瞳で私を見た。
早く話せ、そう言いたいのだろう。
言葉がなくたってそう伝わる瞳だった。