野良狼と野良少女
「…モデルでもやれば?」
「……はい?私が?そんなのありえないでしょ」
急に何を言い出すのかと思ったら、このひとはやっぱりバカなのだろうか。
「お前の顔なら十分稼げるだろ。必要なら知り合い紹介するけど」
「えぇ…」
一ノ瀬くんは目でも悪いのかな。
私なんかごく平凡な顔をしている。
さすがに、中の中くらいではありたいと思って身だしなみには気をつけているつもりだけどさ。
スタイルだってよくない。背は低いし足も長くない。
「私がモデルになれるほどの美人だったら男女問わずいっぱい友達できてるよ」
「おまえ自己肯定感低すぎない?」
「一ノ瀬くんみたいにビジュアルに全フリしてないから!」
「褒めてんの?ディスってんの?俺の顔好きなの?」
マシンガンのように何も考えずに吐いていた言葉が止まった。
俺のこと好きなの?と言った。彼は。
「…いや、イケメンだとは思うけどどちらかと言うと好みではないかな」
「しばくぞ」
なんて言いながら奴は本当に私の頭を小突いた。
軽くだけど。