野良狼と野良少女
「貸しって言うけどさあ…パーカーならもう洗って返したじゃん、お礼とともに」
「お礼っつって今どき菓子折り入れるヤツいるかよ、何歳だお前」
「…人のお礼にケチつけるのもどうかと思いますが」
一ノ瀬くんに呼び出された次の日、私は一応洗って部屋に置いておいたパーカーを返却した。
もちろん教室でではなく、この間一ノ瀬くんがやっていた机の角トン方式を真似してまた非常階段で。
その時パーカーと一緒に紙袋に入れたお礼の菓子折り、もとい饅頭を見てゲラゲラ笑われたものだ。
“ センスがおばさん ” なんて、饅頭美味しいのに。
「どうせ私はおばさんですよ、はいはい。分かったから早く課題やって」
「…お前始業式の時と態度変わりすぎだろ」
「だってあの時はアミと羅奈が同一人物だってバレてないと思ってたから」
あと一ノ瀬旺太は怖いというイメージがこびり付いていたから、なんて言わないけど。
あの時の私は間違いなく蛇に睨まれたカエルとやらだったのだ。
「さすがに誰でも気づくわ。バレたくないならパパ活する時くらい変装しろ」
「っだから、あれから一切やってないし一回きりだったって言ってるじゃん…!」
「パパ活少女アミ卒業オメデトー」
「心籠ってないしもう帰っていい?」
「先生に怒られてもいいならどうぞ」
べ、と舌を出しす一ノ瀬くん。
ったくこの男は…!!
完全になめられている。