野良狼と野良少女
「ちょっと寝ていい?」
「ねえごめん本当にバカじゃないの早く解いてそれ」
同じクラス、隣の席になって分かったことがいくつかある。
1.一ノ瀬旺太は頭がおかしい。
これについては数々の武勇伝からわかっていたことではある。
でもそれとは違う意味でこの人はおかしい。
「もういっそお前が代わりに問題解いた方が早くね」
「……はぁ」
2.遠慮や気遣いという単語が脳みその辞書に載っていない。
「私一ノ瀬くんみたいなミミズみたいな字書けないから無理」
「俺本気出せば字綺麗」
「うそつけ」
一ノ瀬くんのプリントは、幼稚園児のようなギリ解読できるかどうかレベルの文字が這っている。
字が綺麗の対義語のような。
「書道段持ってるし」
「はい?じゃあなんでそんな汚……愉快な字書くの」
「汚いっていうな。だりいからだよ」
3.世の中の出来事9割5分「だりい」で片付ける