野良狼と野良少女
「そのキャラで行けば友達出来そうなのに」
「キャラじゃなくて素だし。さすがにみんなの前ではもう少しいい子でありたいし」
「俺の前でもいい子でいろよ」
「十分いい子でしょ、放課後の貴重な時間一ノ瀬くんのために費やしてるんだから」
時間は有限なんだよ、なんて言うと鼻で笑われた。
政治家じゃないけど、実に遺憾である。
今日は早く帰って溜まった録画でも見ようと思ってたのに。
友達がいないからこその世話焼き根性、どうにかしてくれ。
「前から気になってたんだけどさ」
「なに?」
「お前って何者」
「……はい?」
この一瞬で私という人間が記憶から消えてしまったのであろうか。
実に真剣です、みたいな顔で聞いてくるのが少し腹立たしい。
でもきっと、いや絶対悪気はない。
こう見えて一ノ瀬くんはちょっと天然なところがあるらしい。
最近わかった彼の生態である。