野良狼と野良少女
「なにやってんのって、聞いてんじゃん。答えろクソジジイ」
「あぁ?なんだてめぇ、誰だよ。俺が買った女だ、どうしようが俺の勝手だろ!」
「はぁ?…何?そういう感じ?じゃあキミはなんで泣きそうな顔で助け求めてんの?」
私の腕を掴んだ男の人はそう問いかけてきた。
分かってるよ、私が悪いのは。
でも…こんな人と、ホテルなんて絶対に嫌だ。
「なんでもします…なんでもしますから、助けて…」
俯いたまま涙で震えた声で、そう訴えて下唇を噛む。
自業自得だろって、思われてると思う。
助けてくれないかも、なんて嫌な想像ばかりが膨らんで破裂しそうだった。
「買われたってことは、お前金ないの?」
「あったらこんな所いないです…!」
お金があったら、パパ活なんてしない。
そんな分かりきった質問をしてきた彼に八つ当たりするように、顔を上げてキッと睨んだ。
「え…」
ずっと俯いていた顔を上げ、おじさんを止めてくれた人の顔を見た。
そして私は凍りつく。
だってこの人……
「いいよ、俺が助けてやるよ、お前のこと。ついてこい」
「おい何勝手なこと言ってんだクソガキ!この女は俺が…」
「手切れ金、あとイシャリョー。もう今からコイツ俺のだから、金輪際この女に近づくの禁止。じゃーなたぬきオヤジ」
男の人はバサッと何かを地面に落とし、私の腕を掴んでいたおじさんの手を振りほどいた。