野良狼と野良少女
――お金。
おじさんは地面にばら撒かれたお札に目を丸くし、そして我に返ったように床に落ちたそれを拾い始める。
たくさん落ちたお札、パッと見ただけでも5万円はある。
この人、なんで…
「行くぞバカ娘」
「わっ…!」
フードをとった彼の綺麗な金髪が目を奪う。
「これ羽織ってろ。お前目立つ」
しかしそんなのは一瞬で、脱ぎたての赤いパーカーを少し乱暴にかけられて、そのままフードもかぶらされる。
メンズサイズのそれは私には大きく、顔まで隠れてしまうほどだった。
「……あれっぽいな、赤ずきん。」
「…少女と、狼…?」
「誰が狼だ、食うぞ」
「…そういうとこ、じゃないですかね」
「生意気」
繁華街の喧騒は一時私たちに視線が向いていたけど、なかったかのように賑やかに戻っていた。
そんな街を腕を引かれたまま抜け、気がつけば人気のない道路まで来ていて。
「ねえ、お前なんであんなオッサンと一緒にいたわけ?やっぱパパ活?」
「……そう、です」
「へえ、大人しそうな顔してんのに意外とやり手なんだな」
その発言と嘲笑にちょっとムカついた。
助けてくれた時は神様かと思ったのに、台無しだよ。