野良狼と野良少女



「…なに、食べたいの?あげないよ」




チラッと視線を隣に向ければそんな言葉が飛んできた。


食べかけのパフェを私から遠ざけるように隠す一ノ瀬くんについ舌打ちする。




「いらないよ、バカ」


「バカって言った方がバカ」


「その見た目その厳つさで小学生みたいなこと言わないで」




誰ですか、こんな中身子供のヤンキー作ったの。

見掛け倒しにもほどがある。




最近一ノ瀬くんが狼というかただの大型犬に見えてきた。


シベリアンハスキーだっけ、そんな感じの奴。




「…は、そんな拗ねんなよ。ほら1口やるから」

「んむっ」




ため息をついた口に不意に突っ込まれたスプーンに唖然。



こんなことするのは一人しかいなくて。

口に広がるチョコの味に次第に顔が熱くなる。




これって間接キ…




「うええ!?旺太が人に自分のパフェあげた…!?」


「え、何、明日地震?雷?火事?親父?」





間抜けな声をあげる双子により無事冷静を取り戻したわけだけど。






「ふは、顔赤。小学生か」


「…殴っていいかな」


「さっき肘鉄かましたろ」





隣の男は人をネタにずっと腹を抱えているわけだ。


本当に、今すぐ腹痛にでもなればいいと思う。




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