野良狼と野良少女




「じゃーな、おやすみ」


「あ…おくってくれてありがとう、」




一ノ瀬くんは断る私を無視して、私の住むマンションまで送ってくれた。


ヤノくんの家の近所に住んでるって言ってたじゃん。




私の家は隣町だし、電車で1駅だけど歩いたら30分かかる。



なのになんの文句も言わず一緒に歩いてくれた。

カバンまで持って。




「着ろ」




なんて不器用に私に掛けてくれたパーカーも。


全部全部ひっくるめて一ノ瀬くんはずるい男だと思う。




「狼と赤ずきん再び」


「自分で認めちゃってんじゃん、狼」


「俺狼きらいじゃない」




初めて会った時はしばくぞなんて言ってたくせにね。




なんて思いながらもさっきまで一ノ瀬くんが着ていたパーカーに残るぬくもりを感じる。


ダメだよ私、さすがに気持ち悪い。




なんて煩悩を振り払おうにも纏ったパーカーからは一ノ瀬くんの香水の匂いもして。




ああ、だめだ、沼にハマってしまう。




恋愛なんか出来ないと思ってたのに、

なんて好きになってしまったかのような気持ちを脳内でかき消してその日は眠りについた。



あんまり眠れなかったのはきっと、そのせい。




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