野良狼と野良少女
「こんな事やったの、初めてなんです。ご飯行くだけで3万円って書いてあったから…!」
「っは、ばかなの?んな上手い話あるわけねぇだろ、猿でもわかるわ」
「だってあのアプリ有名だし、口コミだってよかったし…!」
「出会い系に有名もクソもねえだろ。口コミだって大方サクラだ」
私の言い訳はことごとく言い返されグサグサと突き刺さる。
全部正論だからこそ、何も言い返せなくて悔しかった。
「…もう家帰ります。助けてくれてありがとうございました」
「お前、名前は?」
「え?アミ……アミ、です」
羅奈、と名乗ろうとして踏みとどまった。
私が叶野羅奈だと言うことは彼には知って欲しくない。
その思いでついアプリに登録していた偽名を名乗る。
だって彼は…
「……ふぅん、アミね。俺一ノ瀬旺太」
「…どうも」
もう会うこともない私に自己紹介する理由はなんだろう。
そんなのわかりっこないけど、どうでもいいや。
「もーパパ活すんなよ、アミ」
「しないです!」
彼はニヤッと笑ってさっきの話をネタにしてきた。
性格悪っ
「じゃーな」
「さよなら」
もう “ アミ ” と会うことはないですよ。
だって私は叶野 “ アミナ ” ですから。
まぁ、近いうちまた会うでしょうけど…
学校で。