野良狼と野良少女



「ちょこちょこ荷物取りに来たりはしてたんだけど、全然会わなかったもんねぇ」


「…高校入ってからはバイトでほとんど家開けてたので」


「社長に全く頼ってないんでしょう?社長もなかなか帰ってないみたいだし」


「……あの人に頼りたくないんです、私のワガママだけど」




そういうとユキさんは何も聞かずに微笑んでくれた。


頼りたくないだなんて、子供っぽいわがままなのに。




「これ社長から。またしばらく忙しくて帰れないみたいだからさ」




渡された少し分厚い封筒には不格好な字で “ 羅奈 ” と書いてある。


…いらないって、言ってるじゃん。



中に何が入ってるかなんて見なくてもわかる。


そしてそれが、高校生一人でしばらく暮らすことなんか余裕なくらい入っていることも。




「受け取ってあげて。バイト代だけで賄うの大変だろうし、使わないにしても何かのためにもらっておきな」




ユキさんは封筒をテーブルに置いて私の肩をポンと叩く。


きっと私、いま酷い顔してるんだろうなぁ。




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