野良狼と野良少女


「また近いうちに来るね、ご飯でも作りに。風邪ひかないように元気でね」



そう言ってユキさんは大きく膨らんだ父のカバンを持って帰って行った。


あの量ならきっとまた1,2か月は帰ってこないだろう。


最後に会ったのはいつだっけ、なんて親子で思うことはあまりないんじゃないかな。




……荷物ぐらい、自分で取りに来ればいいのに。




私に会いたくないのか知らないけど、秘書をぱしりみたいに使っちゃって。




帰ってこないで欲しいって思ってるくせに、矛盾した意見がぼろぼろ漏れてくる。

ああ、真っ黒だなぁ私。




百合でも薔薇でもなんでもない、汚い自分が嫌になる。

これだから、私はいつまでたっても自分を好きになれないんだ。




「……はぁ。」




『大手叶野グループは本日3つのグループを買収しさらなる事業拡大に向け――』


ピッ

「……」




無音の空間が嫌でつけたテレビも、そのニュースに切り変わった瞬間消してしまう。


もやもやして、真っ暗になったテレビの液晶に映る自分が負のオーラをまとって見えてまた嫌になる。




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