野良狼と野良少女


「…っもう」


「――おい」




いい加減にして、そう口にしようとした瞬間に低い声と共に手首を後ろに引かれる。


そして誰かの厚い胸板にぽすっと体が収まった。




その爽やかなシトラスの香りと、視界の端に金色の髪が映って自分の感覚を疑った。


いるわけ、ないのに…




「…っ、一ノ瀬く」

「うおー!!!旺太サンじゃないっすか!!!」




私より先に声を上げたピンク髪は私が背中を預ける彼にしっぽを振って擦り寄った。







「……え?」




「やめろ太郎、近寄んな。お前の香水臭い」




「相変わらずクール!イケメン!まじで好きっす旺太さーん!!」




ピンク髪を太郎と呼んだ一ノ瀬くん、一ノ瀬くんを旺太さんと慕っているようなピンク髪。



……この2人、もしかしなくても知り合いだよね?




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