野良狼と野良少女


「家ついたぞ」


「……あぁ、うん」




エントランスまで送ってくれたけど、足取りが重くてオートロックを抜ける気にならなかった。




これ以上迷惑かけたくないのに。


心は一ノ瀬くんに助けを求めたがっていて、抑えることで精一杯だった。




「…帰りたくねえんじゃないの」


「…っ、」




鍵を差し込もうとした私にかけられた言葉。




私の心が全部読まれているみたいで泣きそうになる。




なんで、全部お見通しなの。


あの人の家になんか帰りたくないって、言ってもいいのかな。




「ばーか。なんつー顔してんだよ。」




一ノ瀬くんは珍しく笑顔を浮かべて私の髪をわしゃわしゃ撫でた。




「来い、いい宿がある」




そう言って手を取って歩き始めた一ノ瀬くんに素直に着いていく。


というか正直一ノ瀬くんが連れてってくれるならどこでもいいと思ってしまう自分がいた。




「いい宿があるなんて言われて着いてくるあたりお前やっぱちょろいし変わってねぇな」


「なっ…!」




たしかに冷静に考えてみれば、高校生の男女2人で、帰りたくないから宿にって…




「やっぱりわたし帰」

「嘘だよバカ、そこまで性根腐ってねぇわ」




俺をなんだと思ってんだ、なんてまた笑われた。


誰が脅したんだよ…!




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