野良狼と野良少女
「私…叶野グループの社長の娘なの」
今まで自分からこんな話したこと無かったのに、この人たちには何故か知って欲しいと思う。
そんな気持ちからかぽろぽろと零れるように言葉が紡がれた。
「へぇ、叶野グループってあのよくテレビとかでやってるやつでしょ?すごいねぇ」
「だからお前あんなでけぇマンション住んでんだ」
2人とも特に驚く様子もなく聞いてくれて、逆に私が驚いてしまう。
それと同時に張っていた気が緩み、自然と表情も緩んだ。
「お父さんのマンションだけど、今はほとんど私1人で住んでる。
…お父さんは仕事仕事って、私が小さい頃から都会に別で家も持ってて帰ってきてない。」
お父さんがもう一つの家を借りたのはいつだっただろう。
詳しくは知らないけど、きっと私が生まれてすぐのころから借りていた気がする。
「私が小学生の時…お母さんが事故にあって、危篤になっちゃって。でもそんな時すらあの人は仕事優先して病院に来すらしなかった。
最低だし、あの日からずっと世界で1番憎い。
だから私は頼らないで生きてくって決めて、今はあの人のお金全部使わずにバイト代と貯金だけで暮らしてる」
だから魔が差してパパ活しかけて一ノ瀬くんに拾われました、なんて言うと一ノ瀬くんはバカだなってやっぱり笑ってくれた。
一葉ちゃんも特に何も言わずに辛かったねって、抱きしめてくれて。
ちょっと泣いたのは感動からってことで許して欲しい。