野良狼と野良少女


いつもと変わらない表情の一ノ瀬くんがソファから立ち上がりキッチンに消えていくのを目で追う。


寝顔みた?とはさすがに聞けない。




カチッカチッ…


「……たばこ?」




不審な音に後を追ってキッチンをのぞきこんだんだけど。




「……腹減ったからお湯沸かそうと思って」




怪訝な顔をして私を見る彼の手にはカップ麺。


しまいにはお前も食いたいの?なんて聞いてくる一ノ瀬くん。




やっぱり、一ノ瀬くんヤンキー説はほぼゼロ%だ。




「タバコなんか吸ってねえよ、むしろあれ匂いもけむいのも嫌い」


「けむいって…吸ったことあるの?」


「まぁ、俺も一時やんちゃしてたオトコノコなので」




前言撤回。一ノ瀬くんはもしかして、ヤンキーなんじゃなくて “ 元 ” ヤンキーなんじゃないだろうか。


さっきコンビニで不良っぽい子達に囲まれてたのだってそれで説明が着く。




「一ノ瀬くんって…元ヤン?」


「ふはっ、ストレートだな」




私だってもうちょっとオブラートに包んで聞くつもりだったけど、つい口から出てしまったんだ。


思ったことすぐに口に出しちゃうのやめようよ、私。




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